11.2. 評価額の推測

減価償却の主要な論点は、資産の将来価値をどのように推定するかを決定することです。 しばしば行われる不確実な推定と比較して、ここで行わなければならない資産の推定はいくらか難しい問題に関係があります。 資産の減価償却により将来価値を見積もる率直な理由を次に挙げます。

11.2.1. 減価償却体系

減価償却体系は資産を時間が経つにつれてどのように費用計上するかに関する数学モデルです。 減価償却を受けるあらゆる資産に対して、減価償却体系を決める必要があります。 課税目的の場合に覚えておくべき重要なポイントは、資産をある割合で減価償却する必要があるということです。 これは税金減価償却費と呼ばれます。 財務諸表目的のためには、自由に方法を選択できます。 これは帳簿減価償却費です。 小規模ビジネスでは、ほとんどの場合、税金と帳簿減価償却費を同じ料率で使用します。 この方法では、財務諸表上の実際の収益と課税対象の収益の差異はより小さくなります。

本節では3種類の良く使用される減価償却体系を説明します。 それは、定額法定率法、および級数法です。 例を簡単にするために、減価償却される資産の残存価額は0になるとします。 残存価額を使用することを選択した場合、正味帳簿価額と残存価額が等しくなったら資産の減価償却を中止します。

  1. 定額法による減価償却は、各期間に資産の一定額ずつ、残存価額が0になるまで評価額を減少させます。 有効な耐用年数を見積もり、単純にその耐用年数にわたって等しく費用分割するので、これは最も簡単に計算できます。

    例 : 1,500ドルでコンピューターを買い、5年間で減価償却するとします。 減価償却費は毎年300ドルで、次のように計算できます。

    表11.1 定額法による減価償却の例

    減価償却費 残存価額
    0 - 1,500
    1 300 1,200
    2 300 900
    3 300 600
    4 300 300
    5 300 0


  2. 定率法による減価償却では前の期の資産価値の一定割合を減少させます。 より多くの減価償却が期間の早いうちに行われるので、これは前部に重み付けされた減価償却体系です。 この体系では、資産の評価額は指数的に減少します。終了時の評価額 (すなわち、 再販評価額) は0より大きくなります。

    例 : 上と同じ例で定率法で年間30%の減価償却を行います。

    表11.2 定率法による減価償却体系の例

    減価償却費 残存価額
    0 - 1,500
    1 450 1,050
    2 315 735
    3 220.50 514.50
    4 154.35 360.15
    5 108.05 252.10


    注記

    注記 税務当局は、最初の期間により大きな割合の償却を要求 (または容認) するかもしれません。 一方、カナダでは、これが逆になり、初年度はCapital Cost Allowance, CCA (資本費用引当額)の半分だけ許可されます。 この方法では、開始時の方が終了時より資産価値が急速に減少します。ほとんどの資産ではたぶん定額法体系より現実的です。 自動車に関してはこれは確かに真実です。

  3. 級数法による減価償却は、資産の評価額が耐用年数経過後に0に達するのを除けば、定率法と同様に前部に重み付けされた減価償却体系です。 より多くの減価償却が期間の早いうちに行われるので、これは前部に重み付けされた減価償却費体系です。 この方法はアングロサクソン系の国で多く使用されています。 例は次のようになります。

    例 : 最初に、耐用年数合計で資産価値を分割します。前の例にあるように1,500ドルの価値がある資産を5年間で減価償却する場合は、1500/(1+2+3+4+5)=100という計算を行います。 そして、減価償却費および資産価値を次のように計算します。

    表11.3 級数法による減価償却体系の例

    減価償却費 残存価額
    0 - 1,500
    1 100*5=500 1,000
    2 100*4=400 600
    3 100*3=300 300
    4 100*2=200 100
    5 100*1=100 0